新型コロナウイルスのワクチン接種が欧米で始まった。順天堂大学医学部の講師で、免疫学研究に20年以上従事してきた玉谷卓也氏は「開発されたワクチンは副反応も、感染予防効果も未知数。これまでワクチンの開発がこのパンデミックを抜け出すことにつながると考えられてきたが、ワクチンだけでは解決が難しい可能性が見えてきた」という——。

※本稿は、小林弘幸・著、玉谷卓也・監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ワクチンおよび注射器注射
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専門家ほど「いまはまだ打たない」

12月8日にイギリスで、14日にはアメリカで新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が始まりました。これに先立って行われた臨床試験では、90%以上の発症予防効果が確認されたということです。このことから、コロナ禍を脱出するための切り札になるかもしれないという期待が、否が応でも高まっています。

ただ今回のワクチンは、トランプ大統領の言葉を借りれば「ワープ・スピード」で開発されたものです。ファイザー社のワクチンの臨床試験で、最も早く2回目の接種をした人でも、まだ4、5カ月しか経過していません。これまでのワクチン開発では、長期的な安全性の確認が必要とされ、開発に最低でも4年以上かかっていました。

このようなことから、免疫の専門家をはじめ、ワクチン開発の大変さを知る専門家からは、今回のワクチン開発は拙速であり、自分は当分打たないという声が聞こえてきています。またイギリスのワクチン承認について、EUの医薬品の規制当局からは懸念が示されています。

新型コロナという未曽有の災禍において、ワクチンが強力な武器になることは間違いないでしょう。ただワクチンを有効に使いこなすためには、ワクチンとは何か、そして今回のワクチンではどのような点に気をつけなければいけないかを知っておくことが重要です。